2009/09/14

すざく衛星による近傍の明るい銀河団 Abell 3627の観測

copy from http://www.asj.or.jp/nenkai/2009b/html/T10a

○西野 翔、深沢 泰司、林 克洋 (広島大学)
Abell 3627 (Norma cluster)は、X線バンドでは全天で6番目に明るい、近傍 (Z = 0.016)の銀河団であり、近傍宇宙の巨大質量源であるグレート・アトラ クターの質量中心付近に位置している。過去に行われたROSATによる観測で は、中心から南東方向にelongateした構造をしていることが分かっており、重力 的にリラックスしていない衝突型銀河団の特徴を示している。また、ASCAによる 観測では、中心領域と南東領域では2 keV程度の温度の違いがあり、南東領域で 現在、銀河団衝突が起きている可能性が示唆されている。もし現在、銀河団衝突 が起きていれば、衝突合体に伴うプラズマ加熱や加速粒子からの非熱的放射が見つか る可能性がある。A3627は、銀河団進化の観点から、このように興味深い天体であ るが、銀河面付近 (銀緯 -7 度)に位置するため、他の明るい銀河団 に比べて、X線による観測は比較的少ない。
そこで我々は、2009年2月/3月にすざく衛星を用いて、A3627の中心部 (50 ks)/南 東部 (50 ks)の2点のポインティング観測を行った。X線CCD検出器 (XIS: 0.5 - 12 keV), 硬X線検出器 (HXD-PIN: 10 - 50 keV)で得られたスペクトルはいずれも、 5-7 keV程度の熱的放射でよく説明できるものであり、非熱的放射の兆候や超高 温ガスからの放射は確認できなかった。 次に銀河団の物理量の空間分布から、銀河団衝突の証拠をつかむべく、より 詳細なXISのデータ解析を行った。輝度マップや温度マップ上で銀河団衝突に伴 う明らかなジャンプ構造は見つからなかったものの、中心付近の半径10分くらい の領域ではおおよそ7 keVで等温であり、南東方向に向かうにつれて4.5 keV までゆるやかに低下するという、特徴的な温度構造が確認された。 本講演では、これらの解析結果から、現在の銀河団衝突の可能性について 議論する。

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