2009/09/14

「すざく」衛星による衝突銀河団Abell 2142のオフセット観測

copy from http://www.asj.or.jp/nenkai/2009b/html/T12a

○赤松 弘規、 石崎欣尚、大橋隆哉(首都大)、竹井洋、山崎典子、満田和久(ISAS/JAXA)、松下恭子(東京理科大)、佐藤浩介(金沢大)
Warm-Hot Intergalactic Medium (WHIM) は、近傍宇宙の見つかっていない「ミッシングバリオン」の大部分を占め、フィラメント状の宇宙の大規模構造を形成すると考えられている、宇宙の熱的進化の 鍵を握る物質である。WHIMは、銀河団周辺部に密度濃く存在していると考えられており、これまでに多くのWHIM の吸収線、輝線の観測が行われてきた(Kaastra et al. 2003, Finoguenov et al. 2003, Nicastro et al. 2005)。
現在、WHIMに対する最も厳しい酸素輝線の上限値は、「すざく」によるAbell 2218 ($z=0.175$)の観測で得られたものである(Takei et al. 2007)。 A2218 の観測では、厳しい上限値を与えたものの、赤方偏移したWHIMからのO$_{\rm V\hspace{-.1em}I\hspace{-.1em}I\hspace{-.1em}I}$輝線が銀河内のO$_{\rm V\hspace{-.1em}I\hspace{-.1em}I}$輝線に重なっており、O$_{\rm V\hspace{-.1em}I\hspace{-.1em}I}$輝線は赤方偏移した結果、検出器システムの酸素吸収端にかかってしまっていた。 そこで我々は、酸素輝線の赤方偏移が最適となるように選んだ、 衝突銀河団 Abell 2142 ($z=0.0909$) の衝突軸に沿った方向を「すざく」衛星で ビリアル半径(2.7 $Mpc$)を超えて2ビリアル半径までを3ポインティング観測した。 観測は、2007年8-9月に行った。 「すざく」XISの低エネルギー側での高い感度によって、 ビリアル半径を超える領域($r = 2.7 \sim 4.05 Mpc$)で、約 1 keV の熱的放射成分の 兆候を見出した。 さらに、WHIMからの赤方偏移した酸素輝線の上限値を求め、O$_{\rm V\hspace{-.1em}I\hspace{-.1em}I}$輝線(521 eV)ではA2218 と同程度、 O$_{\rm V\hspace{-.1em}I\hspace{-.1em}I\hspace{-.1em}I}$輝線(598 eV)で$I <$ 2$\times 10^{-7}$photons /cm$^{2}$/s/arcmin$^{2}$と約2倍厳しい制限を定めた。 本講演では、銀河団周辺部における銀河団放射とWHIMからの赤方偏移した酸素輝線の上限値について、最新の解析結果に基づき報告する。

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