2009/03/26

「すざく」で観測されたFossil group NGC1550の重元素分布

copy from http://www.asj.or.jp/nenkai/2009a/html/T04a.html
○佐藤浩介(金沢大)、松下恭子(東理大)、川原田円(理研)、中澤知洋(東大)、山崎典子(ISAS/JAXA)、石崎欣尚、大橋隆哉(首都大)
我々は2008年春季年会で報告したように、「すざく」を用いた銀河群・ 銀河団の観測から、銀河間ガス(ICM)に含まれる重元素量と構成銀河 の赤外光度の比が重元素拡散のよい指標となることを示唆した。 しかし銀河群・銀河団では構成銀河の数も多く、中心銀河の影響や 過去と現在の拡散の違いをみることは難しい。
今回我々が「すざく」で観測を行ったNGC~1550はFossil groupの中心に あるS0銀河である。Fossil groupとは、銀河群並の質量を持っている ものの中心にX線で明るい銀河が存在し、それ以外のメンバー銀河がほとんど 存在しない天体である。よって、中心領域($\sim0.1~r_{\rm 180}$)では 中心銀河からの重元素放出の影響を受けているものの、 それより外側の領域では、過去の重元素拡散の様子をそのまま残して いると考えられる。
{\it XMM}衛星の観測から、NGC~1550はクーリングコアを持ち、 アバンダンスは中心部で$\sim$1 solarから$\sim0.1~r_{\rm 180}$で $\sim0.3$ solarになることが報告されている(Kawaharada 2006)。 今回の「すざく」観測の結果も{\it XMM}での観測とほぼ一致し、 中心領域($r<\sim0.05~r_{\rm 180}$)は2成分の熱的放射、 それより外側では1成分の熱的放射に我々の銀河系から放射と 宇宙背景X線放射の重ね合わせで、観測されたスペクトルはよく再現できた。 また、$\sim0.2~r_{\rm 180}$までの温度と各重元素の半径分布を決定できた。 本講演では、今回の観測結果とこれまでの銀河群・ 銀河団との比較から、ICM中の重元素拡散プロセスについて議論を行う。

「すざく」による MS 1512.4+3647 銀河団プラズマの重元素組成の研究 

天文学会 2009 A
copy from http://www.asj.or.jp/nenkai/2009a/html/T03a.html
○川原田円 (理研)、北口貴雄、中澤知洋 (東大)、牧島一夫 (東大/理研)山崎典子 (ISAS)、太田直美 (ISAS/MPE)、深沢泰司 (広大)、松下恭子 (東理大)、佐藤浩介 (金沢大)、大橋隆哉 (首都大)
銀河団プラズマ(ICM)中の重元素は、銀河中の星の内部や超新星爆発 によって出来たものが、広大は銀河間空間に輸送されたものである。 重元素のうち、鉄族は主にIa型の超新星爆発 (SN-Ia) によって作られ、 $\alpha$元素は、II型超新星爆発 (SN-II) の寄与が大きいと考えられ ている。
近年の {\it XMM-Newton} 衛星と {\it Chandra} 衛星による遠方銀河団 の観測から、ICM中の鉄アバンダンスが過去から現在に向けて増加して いる兆候が見えてきた。しかし、これらの衛星では、低エネルギー側で スペクトル輝線に対する感度が劣化することと、検出器のバックグラウンド が高いために、酸素、マグネシウムなどの測定が困難であり、$\alpha$元素 の進化については全くわかっていない。そこで我々は今回、遠方銀河団の ICM中の$\alpha$元素量を世界ではじめて決定すべく、「すざく」衛星で $z=0.372$ の銀河団 MS 1512.4+3647 の観測を行なった。
X線の放射中心から2分角 (612 kpc) 以内からスペクトルは、 3.5分角 (1072 kpc) より外側をバックグラウンドとして解析 を行なったところ、$3.5 \pm 0.1$ keV の 1温度プラズマで良く再現できた。 このときの重元素アバンダンスは、$\alpha$元素が $Z_{\rm O} = 0.32^{+0.46}_{-0.32}$ solar、 $Z_{\rm Mg} = 0.41^{+0.46}_{-0.32}$ solar、 $Z_{\rm Si} = 0.71^{+0.20}_{-0.19}$ solar、 $Z_{\rm S} = 0.38^{+0.21}_{-0.20}$ solar、 鉄が $Z_{\rm Fe} = 0.52^{+0.05}_{-0.05}$ solar となった。これらを近傍の銀河団の平均値と比べると、$\alpha$元素は 誤差の範囲内で一致するが、鉄は3割ほど有意に低い。1天体のみの結果 ではあるが、このことは、ICM中における鉄と$\alpha$元素組成の進化が 異なる可能性を示唆する。

2009/01/04

2008/10/01

Suzaku Observation of the Ophiuchus Galaxy Cluster: One of the Hottest Cool Core Clusters

copy from http://adsabs.harvard.edu/abs/2008PASJ...60.1133F
fujita et al. 2008

We present the analysis of a Suzaku observation of the Ophiuchus galaxy cluster. We confirmed that the cluster has a cool core. While the temperature of the intracluster medium (ICM) decreases toward the center, the metal abundance increases. Except for the core (r lesssim 50kpc), the cluster is hot (˜9-10keV) and is almost isothermal for r lesssim 1Mpc; the latter contradicts a previous study. We do not detect any variation of the redshift of the ICM in the cluster; the upper limit of the velocity difference is 3000km s-1. The iron-line ratios in X-ray spectra indicate that the ICM has reached the ionization equilibrium state. From these results, we conclude that the Ophiuchus cluster is not a major merger cluster, but one of the hottest clusters with a cool core. We obtain the upper limit of non-thermal emission from the cluster, which is consistent with both the recent claimed detection with INTEGRAL and the recent upper limits with the Swift/BAT. If the cluster has bright non-thermal emission, as suggested by the INTEGRAL measurement, it is probably not due to a recent major cluster merger.

2008/03/24

「すざく」衛星による Abell 2199 銀河団の観測II

copy from http://www.asj.or.jp/nenkai/2008a/html/T11a.html

○川原田 円 (理研)、北口 貴雄、中澤 知洋 (東大)、牧島 一夫 (東大、理研)深沢 泰司 (広島大学)
2007年秋の年会における講演(T03a)に続いて、「すざく」衛星の Abell 2199 銀河団の解析結果について講演を行う。前回は、W23系のみのPIN (32/64個)を使用して解析した結果、有意な非熱的信号は見られず、 その上限値は、Center領域で、BeppoSAX衛星の2.3倍厳しい値となる ことがわかった。今回は、フレアしたPINを含むユニット(PIN4個)を除く、 60個のPINを用いた解析を行うことで、統計を改善した。その結果得られた、 非熱的放射に対するより厳しい上限について報告する。
Abell 2199 は非熱的放射のみならず、soft excessと呼ばれる 1 keV 以下のエネルギー領域における熱的成分からの超過成分が示唆 されてきた (e.g. Kaastra et al. 2002)。 soft excess はほか にもいくつかの天体でも示唆されてきたものの、それが本当に存在するのか、 またあるとしたら熱的なのか非熱的なのか、まったくわかっていない。
「すざく」の時代になって、唯一 Sersic 159-03で soft excess の存在が確かめられている (Werner et al. 2007)。そこで今回我々は、 Abell 2199にsoft excess が存在するかどうか調べるためにXISの スペクトルを解析し、予備的な結果ながら、有意なsoft excessが 見られないことがわかった。今回はこのAbell 2199 の soft excess の上限と、これまでの衛星の結果との整合性について議論する。

すざく衛星による銀河団A2256の観測

copy from http://www.asj.or.jp/nenkai/2008a/html/T09a.html

日本天文学会2008年春季年会
T09a
すざく衛星による銀河団A2256の観測
長井雅章、○林田 清、田和憲明 (大阪大理)
銀河団の進化、成長に 銀河団のマージングがはたす役割は大きい。 銀河団A2256は、1)X線表面輝度に二つのピークをもち、2)構成銀河の 速度分布が二つ(あるいは三つ)の成分で構成され、3)X線観測で 得られるガス温度の分布が非一様で、特にコールドフロントと 呼ばれる不連続な構造をもつ、という特徴から、近傍の代表的な マージング銀河団として知られている。
我々は、2006年11月、すざく衛星を用いてこのA2256銀河団を観測した。 X線CCDカメラXISによって取得したメインクラスターとサブクラスター、 それぞれのX線スペクトルから、ガス温度が7.5keV, 5.7keVと異なる ことを確認した。さらに、それぞれの高温ガスの赤方偏移を X線スペクトルフィットから求め、メインクラスターの後退速度 がサブクラスターのそれより1590+700-750km/s (誤差は90\%信頼 限界の統計誤差)だけ大きいことを、はじめて明らかにした。 この値は、可視光で測定されている構成銀河の後退速度と矛盾がなく、 この銀河団において、メイン、サブそれぞれのクラスターが いままさに衝突をはじめた、マージングの初期段階にあることを 示している。
A2256は、Beppo-SAX, RXTE衛星による観測 で硬X線非熱的放射が検出された銀河団でもあり、 電波レリックと呼ばれるひろがった電波源の存在とあわせて、 非熱的過程が銀河団規模で起こっていることが示唆されている。 すざく衛星の観測によって得られた非熱的放射に関する制限に ついてもあわせて報告する。

「すざく」による高温銀河団ガス運動の探査

copy from http://www.asj.or.jp/nenkai/2008a/html/T10a.html
日本天文学会2008年春季年会
T10a
「すざく」による高温銀河団ガス運動の探査
○金丸武弘 (東京理科大学)、川原田円(理化学研究所)、玉川徹(理化学研究所)、早藤麻美(東京理科大学)、牧島一夫(東京大学)、他「すざく」チーム

銀河団は、小さな銀河団同士の衝突合体を通じて現在のような姿に成長してきたと考られている。銀河団同士の衝突に伴って高温ガスがバルク運動を持つとする と、輝線スペクトルにドップラーシフトが生じると考えられる。そこで輝線のエネルギーを決定することで、衝突合体の様子に直接的な手がかりが得られると期 待される。今回は「すざく」が観測した、ガス温度分布やX線イメージの形状からリラックス状態と考えられるPerseus銀河団中心領域と Abell1060と、衝突合体中と思われるAbell 3376、Abell 3667を対象にしてX線スペクトル解析を行いガスバルク運動を調べた。「すざく」により現在まで挙げられてきた成果を上記の天体解析結果に加え、銀河団 の高温ガスバルク運動について報告する。
鉄輝線の位置依存性を調べるために、XIS検出器の視野をおよそ2.2'×2.2'、4.5'×4.5' の正方領域に分け、各領域についてX線スペクトルを抽出しモデルフィットを行った。静止系でのエネルギーと比較し各領域での視線速度を計算しバルク運動を 調べた。結果リラックス状態と考えられるPerseus銀河団中心領域とAbell 1060のガスバルク運動は音速を越えるような状態は確認出来なかった。衝突合体中と考えられるAbell 3376、Abell 3667のガスバルク運動は音速程度の速度差を生じていた。この事は銀河団ガスは衝突合体に際して音速を越えるガスバルク運動を生じ、次第にリラックスし ていくという銀河団 の衝突合体仮説が正しかった事を意味しているのかもしれない。