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○真喜屋龍(京都大)、戸谷友則、中澤知洋(東京大)
コンプトン衛星に搭載されたガンマ線観測装置EGRETによって観測された天体の うち、半分以上がいまだ未同定であり宇宙物理学上の大きな問題となっている。 今回我々はその内の一つ3EGJ1234-1318のすざくによる観測を行った。 \par この天体の周辺領域には多数の銀河・銀河団が密集してフィラメント構造を形成 しており、現在も活発に大規模構造形成が行われていることが示唆されている。 標準的な構造形成理論によれば、構造形成はまずCold Dark Matterが自己重力で 集中し、そこにバリオンガスが落ち込んで衝撃波加熱され、それが冷えて星や銀 河を作る、というシナリオで起こる。この衝撃波で加熱された電子とCMB光子に よる逆コンプトン散乱で、硬Xからガンマ線領域に渡る拡がった非熱的放射が期 待される。我々は3EGJ1234-1318の起源がこの非熱的放射であるという仮説を立 て、その検証のためにすざくによる観測を行った。 \par 今回我々は上記のフィラメントに沿ってすざくで4視野の観測を行った。いずれ の視野においてもすざくHXDでは有意なシグナルが検出されなかったため、バッ クグラウンド揺らぎの見積りからflux upper-limitのみ求めた。これは4視野と もに、EGRETの結果から期待される値と同程度であった。 すざくXISでは、過去にX線での観測例の無い二つのAbell銀河団A1555とA1558の 検出に成功した。これらについてスペクトル解析を行ったが、非熱的成分は検出 できなかった。 \par 以上の観測結果を踏まえ、上記の仮説への示唆を議論する。
Abell 2319銀河団は、z=0.0557の近傍の衝突銀河団であり、非一様な温度分布や コールドフロントが見つかっている。可視光観測から、視線方向に 二つのグループが重なっており、その速度差はおよそ3000km/s に達すると示唆されている。さらに、銀河団全体を覆う電波ハローが検出されて おり、610MHzで1Jyであることがわかっている。この放射は、銀 河団中に広がる、エネルギーがGeV程度の電子のシンクロトロン放射であると考え られる。同じGeV電子が宇宙マイクロ波背景放射の光子を逆コンプトン散乱で 放射する硬X線を検出できれば、磁場強度の決定も可能となる。